抄録
小胞輸送は,オーキシンの極性輸送,重力屈性,細胞分裂など植物の生命機能において重要な役割を果たしている.小胞輸送の制御に関わるRabファミリーは,真核生物に広く保存されている低分子量GTPaseで,輸送小胞の標的膜への繋留・融合を制御していることが知られている.なかでもRab5グループは,他の生物のRab5と高い類似性を示すRHA1,ARA7と植物に特異的なARA6の3つのメンバーから構成されている.これらのシロイヌナズナのRab5メンバーが,植物個体レベルで持つ生理的意義を明らかにするために,変異体の表現型解析を行った.rha1,ara7,ara6の単独の変異体は野生型と同様に生育したが,rha1ara7二重変異体は単離できなかった.このことから,RHA1とARA7は重複した機能を持つと考えられる.さらに,野生型とのクロスポリネーション解析により,このara7rha1変異体は雄性配偶体致死となることが明らかになった.そこで,これらの変異が花粉の形成や花粉管の発芽・伸長等のいずれの過程に損傷を引き起こすのかを調べるため,変異体より花粉を採取し,光学顕微鏡,電子顕微鏡での観察を行った.その結果,変異体の花粉内部に異常なカロースの沈積などの異常が生じている様子が観察された.また,この変異体の花粉管の発芽・伸長など機能面の解析結果についても報告する.