抄録
白葉枯病は東南アジアおよび日本の西南暖地でのイネの主要病害であり、多くの研究が国際的に行われている。我々は白葉枯病に対する圃場抵抗性を持つ「日本晴」ゲノム内のレトロトランスポゾン Tos17 を増殖させた突然変異集団(ミュータントパネル)から白葉枯病の圃場抵抗性が失われた系統を選抜した。突然変異系統の中のXC20系統は、第9染色体に挿入されていた Tos17 が白葉枯病の圃場抵抗性欠失に関わっていた。挿入された Tos17 の付近には約430bpのタンパク質翻訳領域( xc20 )が存在し、突然変異系統では xc20 mRNAの発現が抑制されていた。XC20タンパク質のアミノ酸配列は、トウモロコシZmSAUR2、コショウupa5と相同性があった。ZmSAUR2はオーキシンで誘導されるカルモジュリン結合タンパク質、upa5は斑点細菌病 Xanthomonas type III effector proteinによって誘導されるタンパク質であった。さらにゲノムライブラリーから単離した xc20 をXC20突然変異系統に再導入した組換え個体は白葉枯病圃場抵抗性の回復が観察された。従って xc20 は白葉枯病の圃場抵抗性に関与する遺伝子であり、その機能が失われることによって抵抗性が失われることが示唆された。