抄録
Pti1aは、イネにおいて真性抵抗性、基礎的抵抗性の発現を負に制御する因子である。Pti1aのキナーゼ活性の耐病性シグナルの制御について検証するため、Pti1aの活性化部位に変異を入れた、Pti1aT233Aをpti1a変異体に導入し、相補検定を行った。Pti1aT233A形質転換体はpti1a変異体で認められる擬似病斑形成、防御遺伝子PR1bの発現が抑制され、さらに親和性いもち病菌に対する罹病性が回復した。以上の結果は、pti1a変異体の擬似病斑形成の抑制に、Pti1aの活性化ではなく、Pti1aの存在が必要であることを示している。親和性白葉枯病菌を用いて基礎的抵抗性について解析した結果、Pti1aT233A相補個体は親和性白葉枯病菌に対する抵抗性が有為に減少した。これらの結果は、Pti1aのThr-233のリン酸化が、基礎的抵抗性を活性化させる重要な機構であることを示している。次に、Pti1aの制御機構の解明を目的に、相互作用因子Pik1の機能解析を行った。Pik1pro:GUS形質転換イネを用いていもち病菌接種時の応答を解析した結果、病斑およびHR部位周辺で特異的に発現が誘導され、さらに同部位にH2O2蓄積が認められた。また、Pik1はH2O2処理後10分で一過的にリン酸化されることから、Pik1は病原菌の初期認識にも関与する可能性が示唆された。