抄録
浮イネは通常の栽培条件では、栽培イネと同じく~1m程度の草丈であるが、洪水などの深水条件では著しい節間伸長を示し、最大8mまで伸長する。浮イネの有する洪水適応性、すなわち節間伸長制御機構の解明は、植物における不良環境への適応と節間伸長機構に新たな知見をもたらすと考えられる。本研究では、浮イネ性に関与するQTL解析およびポジショナルクローニングによって単離された浮イネ遺伝子、Snorkel1(SK1)およびSnorkel2(SK2)の機能解析を行った。
単離されたSK1, SK2は、既存のデータベースには存在しない新奇の遺伝子であったため、その遺伝子構造および機能を解析した。その結果、SK1, SK2は共に核移行シグナルとAP2/ERF domainを持ち、エチレンによって発現が誘導されるERF型の転写因子であることが明らかとなった。さらに、SK1, SK2はエチレンシグナル伝達経路因子であるEIN3と結合することが示された。これらのことから、SK1, SK2はエチレンシグナル伝達経路で機能していることが示唆された。また、エチレンおよびジベレリンに関する生理学的実験を行った結果、エチレンとジベレリンはSK1、SK2を介して密接に関与しており、浮イネの深水条件下での節間伸長に重要な働きを持つことが示唆された。