日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物オートファジーの新たな生理的役割
*吉本 光希大隅 良典白須 賢
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p. 0380

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抄録
オートファジーは、オルガネラを含む細胞質成分を液胞に輸送し、分解する真核生物に普遍的な細胞内分解システムである。
私たちはこれまでに、電子顕微鏡観察に依拠しない植物オートファジーのモニター系を開発し、(1) ATGautophagy-related)遺伝子破壊植物(atg mutants)はオートファジー能を欠損していること、 (2)オートファジーが不能であると栄養状態が良いにもかかわらず、老化・細胞死が促進することを明らかにしている。しかしながら、なぜオートファジーが不能であるとこのような表現型が示されるのかについては依然不明であり、植物オートファジーの生理的役割を明らかにする上で大変興味深い問題である。
最近、私たちはatg mutantsの老化・細胞死促進表現型がサリチル酸水酸化酵素遺伝子(NahG)の過剰発現によって抑制されることを見いだした。しかし、NahGによって分解されないサリチル酸アナログ、benzothiadiazole(BTH)を添加するとNahGによる抑制は解除された。これらの結果は、atg mutantsではサリチル酸生合成以降のシグナリング経路が活性化されており、それにより老化・細胞死が促進していることを示唆している。植物オートファジーはサリチル酸シグナリングの除去の一端を担っているかもしれない。
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© 2009 日本植物生理学会
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