抄録
光学活性1Bu+(0)準位とそれと重なる光学禁制1Bu-(2)または3Ag-(1)準位(それぞれスフェロイデンとリコペン)を、約30 fsパルスを用いてコヒーレントに励起すると、1Bu-(0)または3Ag-(0)準位からの誘導発光が観測されることを見出した。この方法で禁制準位1Bu-(0)と3Ag-(0)のエネルギーを決定することができる(三木ら,Chem. Phys. Lett. 457 (2008) 222)。一方我々は、バクテリオクロロフィルの配位状態、即ち「5配位の軸配位子の反対側に、相互作用できる6番目の軸配位子が存在するかどうか」を25Mg-NMRシグナルの線幅を用いて判定できることを見出した(柿谷ら,Biochemistryに受理)。これは、酸素や窒素の6番目の配位/相互作用の検出を可能にする。
Rba. sphaeroides 2.4.1とRsp. molischianumのLH2アンテナ複合体には、スフェロイデンとリコペンがそれぞれ捩れた状態で結合しており、一方バクテリオクロロフィル(BChl)に関しては、2つのB850 BChlと1つのB800 BChlが結合している。我々は、これらのアンテナ複合体に結合したカロテノイドの1Bu-, 3Ag-禁制状態のエネルギーを決定し、三種類のBChl分子の軸配位/相互作用状態を明らかにすることを目指して、実験を行っている。