抄録
冷凍庫に保管しておいたRhodobacter sphaeroidesのカロテノイド欠損株R26.1を培養している内に、ピンク色の株が見出された(以下これらをそれぞれ”R26.1”株,ピンク株と呼ぶことにする)。ピンク株は、培養中の”R26.1”株に白色光を時折照射することにより、増殖し始めた。単離して培養したピンク株から抽出したカロテノイドを、ダイオード・アレイ検出器を装着したHPLC装置により分析した。カロテノイド成分の吸収スペクトルは、ピンク株が共役二重結合数n = 10, 11, 12のカロテノイドを含むことを示唆したが、主成分はn = 11のカロテノイドであった。このようなカロテノイド組成は、Rhodobacter sphaeroidesや他の紅色光合成細菌では見られないものであった。また”R26.1”株と純粋なR26.1株からクロマトフォアを調製すると、収量と吸収スペクトルが異なっていた。これは、両者が異なっていることを示唆する。現在我々は(1)ピンク株から抽出されたカロテノイドの構造決定と、(2)ピンク株,”R26.1”株,純粋なR26.1株の16S rDNAの分析を行っている。