抄録
我々の研究室では地上部のジベレリン(GA)が根の遺伝子発現に与える影響を調べてきており、その一環としてシロイヌナズナのGA欠損変異体(ga3ox1/ga3ox2)の地上部にGAまたは水を与えた根のマイクロアレイ解析を行った。GAを与えたことにより発現量の増加の見られた遺伝子の1つに2価鉄トランスポーター(IRT1)が存在した。鉄は植物に欠かせない要素であり、シロイヌナズナを含む双子葉類では、3価鉄還元酵素(FRO2)とIRT1により、土壌中の鉄を根の細胞に取り込んでいる。このマイクロアレイの結果から、地上部のGAが根のIRT1の発現制御に関与していることが期待された。そこで、本研究ではGA欠損変異体(ga3ox1/ga3ox2)を用いてWT(Col)と遺伝子の発現量を比較する事でGAの働きを検証した。RT-PCRによる解析で、鉄が十分でも欠乏していてもWTに比べGA欠損変異体ではIRT1とFRO2の発現量に減少が見られた。また、IRT1やFRO2の転写因子についても、IRT1と同様の傾向であった。さらに、GA欠損変異体の地上部にGAを与える事で、IRT1やFRO2の発現に上昇が見られた。以上の事から、内生のGAが鉄吸収関連遺伝子の発現を制御している可能性が示唆された。