抄録
植物の根は様々なイオンにより生長が阻害される。これは、細胞分裂と伸長が阻害されるためであるが、その詳細は不明な点が多い。この根のイオンストレスに対して、遺伝子発現を調節するが、それには耐性システムを駆動する反応も含まれている。イオン障害では、様々な遺伝子発現が調節されるが、多くの解析では一般的な防御機構とある程度特異的な防御機構を分けて議論されているわけではない。また、その全体像を議論した研究も少ない。今回は、シロイヌナズナの根をアルミニウム、塩、カドミウム、銅で処理し、誘導される遺伝子を比較することにより、遺伝子発現調節の意味と、各ストレスの生理的な特徴を解析した結果を報告する。各イオンストレスを同じレベルで付与し、24時間処理した根から抽出したRNAを、アジレント社のArabidopsisVer2で比較した。独立した実験で、必ず最上位に見出された遺伝子を比較し、すべての処理(Al,Cd,CuとNaCl)で共通して見出される遺伝子には、GSTなどの活性酸素消去系タンパク質とCa結合タンパク質が多く、一方、1種のイオンでのみ検出される遺伝子は、塩処理におけるDREB、Al処理でのAtALMT1など、耐性を支配する遺伝子が数多く見出された。これらの遺伝子のGO分類から、各ストレスの特徴が明らかに異なることがわかった。既知の耐性遺伝子とともに、各ストレスの傾向を議論する。