抄録
Pentatricopeptide repeat (PPR) タンパク質は陸上植物で数百個の巨大な遺伝子ファミリーを形成しており、植物の発生、分化、生殖など様々な生理現象に重要な役割を担っていると考えられている。PPRタンパク質の主要な機能として、ミトコンドリアや葉緑体のRNA前駆体のプロセシングに関与することが報告されているが、大多数のPPRタンパク質については未解明である。我々は、初期の陸上植物であるヒメツリガネゴケのPPRタンパク質遺伝子について、網羅的な遺伝子破壊株の作製を行っているが、今回、非常に興味深い表現型を持つPpPPR_63遺伝子破壊株を得たので報告する。表現型の異常として、1)原糸体コロニーの生長の遅延、2)側枝始原細胞の球状化、3)分枝数の増加が観察された。PpPPR_63はPPRモチーフ以外にC末端にヌクレアーゼ活性を持つと推測されるNYNドメインを持っている。PpPPR_63の細胞内局在を明らかにするため、遺伝子の3´端のエキソンに緑色タンパク質 (GFP) コード配列をノックインした安定形質転換体を作製し、GFP蛍光の局在性を観察した。その結果、PpPPR_63は原糸体、仮根および芽の細胞核に局在することが明らかになった。このことから、PpPPR_63は原糸体、仮根および芽の生長や分化に関与している可能性が示唆される。