抄録
長日植物であるシロイヌナズナでは、長日条件下において葉の維管束篩部でFT遺伝子が発現し、茎頂に移動したFT蛋白質がbZIP型転写因子FDと相互作用してAP1などの下流遺伝子の転写を制御することによって花成を促進する。しかしながら、遺伝学的研究などの知見からFT蛋白質の花成促進機能はFD蛋白質に完全には依存しないと考えられる。そこでわれわれは新たにFT蛋白質と相互作用する因子の同定を目指し、TCP蛋白質に着目した。TCP蛋白質ファミリーはTCPドメインと呼ばれる保存されたbHLH領域を持つ転写因子ファミリーであり、シロイヌナズナには24個の遺伝子が存在している。本研究ではこの中から5つのTCP蛋白質を選び、酵母two-hybrid法とタバコ表皮細胞でのBiFC法を用いてFT蛋白質との結合能を検証した。その結果、複数のTCP蛋白質がFT蛋白質との結合能を示した。また、BiFC蛍光の観察結果より、TCP蛋白質によって蛍光の強度や細胞内局在に違いが見られた。この局在の違いについては、TCP-EGFP融合蛋白質の観察により、TCP蛋白質の細胞内局在の違いをほぼ反映していることがわかった。現在は、シロイヌナズナ体内、特にFT蛋白質の機能部位であると考えられる茎頂分裂組織でFT蛋白質と相互作用して機能するTCP蛋白質を同定するため、TCP遺伝子の発現パターンの解析を行っている。