抄録
我々はこれまでに、シロイヌナズナにおける27種類Nudix hydrolase (AtNUDX1-27) の中で細胞質型AtNUDX11およびミトコンドリア型AtNUDX15が様々なCoAに対して加水分解活性を有することを示した(Plant Physiol. 2008, 148: 1412-24, Plant J. in press)。さらに、AtNUDX15は選択的スプライシングによりペルオキシソーム局在型アイソフォームも生成していると考えられた。そこで本研究では、遺伝子破壊株を用いてAtNUDX11及びAtNUDX15の生理機能を解析した。AtNUDX11およびAtNUDX15遺伝子破壊株の葉では、CoA pyrophosphohydrolase活性が野生株と比較してそれぞれ80.4%および46.2%に減少していた。しかし、野生株と比較してそれら遺伝子破壊株の生長、花成や種子形成に有意な変化は見られなかった。また、CoA生合成酵素変異体で共通して認められる特徴の一つであるスクロース非添加培地での発芽初期段階の生長阻害および塩(125 mM)ストレス耐性も認められなかった。これらのことから、AtNUDX11およびAtNUDX15は互いに機能を相補していると考えられた。現在、二重遺伝子破壊株の作出およびCoAや脂肪酸含量の定量を試みている。