抄録
脂肪酸によるタンパク質の修飾は、膜表面への移動・局在やタンパク質間相互作用の変化など、タンパク質機能調節に重要な役割を果たしている。ミリストイル化は、脂肪酸の1つであるミリスチン酸が翻訳時にタンパク質のN末端に付加する反応である。シロイヌナズナにおいてミリストイル化を受けると推測されるタンパク質は319種類存在し、その種類もキナーゼ、転写因子など多岐に渡るが、タンパク質の機能とミリストイル化の相関については不明な点が多い。この要因の1つとして簡便な植物タンパク質のミリストイル化検出系が存在しないことがあげられる。そこで我々は、コムギ無細胞翻訳系を用いて簡便かつ再現性の高い植物タンパク質のミリストイル化反応系の確立を目的として研究を行なった。ミリストイル化のコンセンサス配列を持つシロイヌナズナのタンパク質3種類およびミリストイル化配列を融合させた可溶性タンパク質2種類をミリスチン酸存在下でコムギ無細胞翻訳系により合成し、各タンパク質がミリストイル化されていることを確認した。また、ミリストイル化配列に変異を導入した場合ミリストイル化は見られなかった。このことから、コムギ無細胞翻訳系は植物タンパク質のミリストイル化を簡便に検出する上で有用であると考えられる。現在リポソームを用いて各タンパク質の膜との相互作用を解析しており、これらの結果も合わせて報告する。