抄録
活性酸素種生成酵素NADPH oxidaseは、植物の生体防御,ストレス応答,形態形成等広範な過程で重要な役割を果たす.シロイヌナズナには,その本体酵素をコードすると考えられるAtrboh遺伝子が10種存在する.ヒト培養細胞HEK293Tを用いた異種発現系解析により,AtrbohC, D, Fは,ROS生成能を持つこと,EF-handモチーフへのCa2+の結合とリン酸化により相乗的に活性化することを示した(Takeda et al, Science, 2008; Ogasawara et. al., JBC, 2008; 木村ら 日本植物学会大会2008)が,それ以外の遺伝子の機能は不明である.そこで,植物の生活環全体における積極的なROS生成の生理的意義を明らかにするため,シロイヌナズナAtrbohA-Jの網羅的な解析を進めている.これまでに,AtrbohGを除く全ての遺伝子を単離し,異種発現系を用いてCa2+イオノフォアionomycin,タンパク質脱リン酸化酵素阻害剤calyculinAにより誘導されるROS生成活性を調べた.これらのROS生成活性の相違について報告し,Atrbohの機能分担について議論する.