抄録
MAPキナーゼ情報伝達系は様々な生物種の細胞機能制御に必須な重要な情報伝達系であるが、植物固有のgroup D MAPキナーゼに関してはほとんど研究は進められていない。植物モデル生物の微細緑藻クラミドモナスには、植物に保存された5種のMAPキナーゼ相同遺伝子をコードしている。そのうちgroup D MAPキナーゼと推定されるMAPK2及びMAPK4相同遺伝子は遺伝子構造及び機能は不明のままであった。我々は両MAPキナーゼ相同遺伝子のcDNA及びゲノムDNA配列を決定することにより、タンパク質の構造的特徴を明らかにすると共に、他種藻類・高等植物相同遺伝子との構造的比較から、group D MAPキナーゼの機能に必須なドメイン領域の推定を行った。また、RT-PCR法により発現量・発現時期の推定を行い、MAPK2相同遺伝子は通常培養時に弱く恒常的に発現しているのに対し、MAPK4相同遺伝子はまったく発現していないことを明らかにした。現在、両相同遺伝子のRNAi発現抑制体を作成し、細胞機能への影響を調べることにより、微細緑藻における機構を解明すると共に、高等植物における機能推定を進めている。また、上流因子のMAPKキナーゼを特定するために、クラミドモナスがコードする2種のMAPKキナーゼ相同遺伝子についてもRNAi発現抑制株を作成し、表現型に対する影響を調べている。