抄録
シリカ多孔体は内部にナノサイズの細孔を大量に持つ無機素材である。我々は、これまでにシリカ多孔体中にいくつかの光合成膜タンパク質を吸着させ、機能させることに成功した。精製された紅色光合成細菌T.tepidumのアンテナタンパク質LH IIや好熱性シアノバクテリアT.elongatusのPS Iを、タンパク質サイズに適合した細孔内径をもつシリカ多孔体に導入する方法を開発した。これらのタンパク質は細孔内で活性を保ち、より高い熱耐性を示す。
本研究では、好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus 由来の光化学系 II (PS II ) 反応中心複合体(分子量756 kDa)をシリカ多孔体中へ導入し、機能を調べた。吸着時にPS II の酸素発生活性は50%ほど減少し、蛍光誘導期現象で測定されるF0が増大したが、その後は長期間安定であった。色素系の状態とタンパク質構造はほとんどかわらない事を吸収と蛍光スペクトルで確認した。熱耐性は維持されていた。さらに異なる細孔径をもつシリカへ吸着させ比較した。シリカ多孔体に吸着したPS IIは見かけ上固体状態で、光による酸素発生や、水分解反応を利用する上で新たな素材となる。