抄録
学業的延引行動は,学業的に習得及び遂行しなければならないことを不本意ながらも遅らせることであり,大学生にとって深刻な問題である。しかし,学業的延引行動と自我同一性との関係について,これまで比較的注目されていなかった。学業的延引行動に関する青年期特有の要因について明らかにするために,総計354 名の大学の教育学部かまたは看護専門学校に在籍する学生に,学業的延引行動及び同一性地位測定尺度に回答してもらった。その結果,以下の2 点が明らかとなった。(1) 学業的延引行動に対して,現在の自己投入と将来の自己投入の希求は,有意な先行要因であることが示されたが,過去の危機との間には有意な関係は認められなかった。(2) 提出間際までに不必要に課題を遅延する行動は,同一性地位が成熟するに連れて緩和するという先行研究(Shanahan & Pychyl,2007) の報告は必ずしも支持されないことが示唆された。本研究の結果の理論的及び教育的意義,そしてまた今後の課題について討論した。