抄録
これまでリンゴの花成に関わる遺伝子の研究を行い、シロイヌナズナLEAFY、FT、TFL1遺伝子のリンゴのオルトログであるAFL、MdFT、MdTFL1の発現特性と花成の関係を調べてきた。前回の大会(49回札幌大会)で報告したように、MdFT遺伝子は花芽形成期に発現が誘導されず、茎頂部で常時発現していた。しかしMdFTを過剰に発現する組み換え体リンゴでは、遺伝子導入後、3から6ヶ月以内に開花する個体が得られた。開花の程度は導入したMdFT遺伝子の発現量と比例する事が示唆された。これらの組み換えリンゴは月に1から2個の単生花をつけ続けた。このことはMdFTが花成に強く影響することを示唆した。また誘導された花は、花弁数が増加し、雌ずいが無いか、花柱のみで子房や胚珠が確認できないものが多く観察された。これらの組み換えリンゴを1年生の台木に緑枝接ぎした穂木で誘導された花も全く同じ形態を示した。リンゴの品種の中で、観賞用のクラブアップルに同様に花弁数が増加し、全く失われているか痕跡な雌ずいをもつ花をつける品種がある。6種類のそれら八重クラブアップルのMdFTの発現を調べたところ全品種とも正常花をつける品種より非常に高いことが明らかになった。MdFT組み換えリンゴの花の形態がMdFTの過剰発現による影響であることが強く示唆された。