抄録
シロイヌナズナのB3 DNA 結合ドメイン因子HSI2とそれに相同なHSL1の二重遺伝子破壊株(KK変異株)種子は、発芽後に糖依存的に種子成熟遺伝子群を強く発現し、肥大した胚軸に大量の種子貯蔵タンパク質や油脂を蓄積して1週間後に生育を停止し1)、その種子成熟プログラム抑制機構と標的遺伝子に興味が持たれる。変異アリルを用いた解析から、これらの抑制にはHSI2、HSL1のC末端EAR転写抑制モチーフは必須でないことが示唆された。種子発芽後の抑制機構解析のためHSI2のDEX誘導型RNAiをhsl1 破壊株(HSI2-RNAi株)に、またHSL1のDEX誘導型RNAiをhsi2破壊株(HSL1-RNAi株)に導入した。いずれの種子も発芽過程でDEX依存的にHSI2やHSL1のmRNAが低下し、胚軸が肥大して成長が遅延したが、DEX誘導後の遺伝子発現パターンの変化は両者で異なり、種子成熟遺伝子に関してはHSL1-RNAi/hsi2株の方がKK変異株に近い変動を示した。これらを使って発芽後のいつHSI2やHSL1が種子成熟プログラム抑制に必要かを解析し、またHSI2のB3ドメインは種子成熟遺伝子プロモーターのRY配列に作用するか否かをプロトプラストでの一過性発現系などを用いて解析している。
1)Proc Natl Acad Sci USA.104: 2543-47 (2007)