抄録
我々は理研のシロイヌナズナDsタグライン約11000ラインから、albino or pale-green(apg)変異ラインを38ライン単離している。その中の一つアルビノの表現型を示すapg13変異体は、細菌のペプチドグリカン(PG)合成系で、UDP-N-アセチルムラミン酸-dipeptideにジアミノピメリン酸またはリジンを付加する酵素であるMurE遺伝子を原因遺伝子とする。apg13の解析結果は、この遺伝子がplastid-encoded RNA polymeraseによる色素体遺伝子発現に関わることを示しており、このことはMurEの機能がシロイヌナズナではPG合成から遺伝子発現関連へと変化していることを示唆している。今回我々は、新たなapg17変異体の原因遺伝子がMurEと同様に細菌のPGの維持に関与する遺伝子のシロイヌナズナホモログであることを見いだした。野生型における遺伝子発現は葉で最も強く、茎、花序、花でも発現が見られたが、根では発現は見られなかった。GFP融合タンパク質を用いた解析は、APG17タンパク質が葉緑体に局在していることを示唆した。apg17変異体は、葉が斑入りまたは薄緑色となり、葉緑素含有量は約70%に減少していた。また、野生型と比べ胚軸の長さが約1.4倍に伸長し、根は0.7倍に減少していた。apg17の変異形質について、現在更に解析を進めている。