抄録
単細胞性紅藻Cyanidioschyzon merolae10Dは核、ミトコンドリア、葉緑体が一つずつという極めて単純な細胞構造をもつ。我々は、この生物をモデルとした真核細胞の基本的構築に関する研究を進めるため、基盤となる形質転換技術の開発を進めている。
C. merolaeのURA5.3遺伝子は、オロト酸ホスホリボシル転移酵素(URA5)とオロト酸脱炭酸酵素(URA3)が融合した蛋白質をコードしている。前回までに我々は、C. merolae URA5.3遺伝子のURA3領域(3’側)を、別の単細胞紅藻Galdieria sulphurariaの対応領域と置換することで、URA3領域での相同組換えを避けるようなキメラ遺伝子を構築した。さらに5-フルオロオロト酸耐性を指標として取得されたURA5.3欠損株(URA5.3遺伝子中のURA3領域frameshift変異株:ウラシル要求性)を受容細胞として用いて形質転換実験を行った結果、ウラシル非要求性コロニーが得られ、このキメラ遺伝子がマーカーとして機能することを報告した(2007年度年会)。今回、このマーカー遺伝子に、RubisCOの転写因子であるCfxQ遺伝子の上下領域を連結した直鎖状DNAを用いて形質転換実験を行った。得られたウラシル非要求株を解析した結果、シングルクロスオーバーによりゲノムに組み込まれていることが示唆された。