抄録
自然環境において、植物は複合的なストレスにさらされている。特に乾燥と高温の複合ストレスは地球上の多くの地域で発生し、植物の生存を妨げていると考えられるが、生理学的な影響や応答のしくみはほとんど明らかになっていない。シロイヌナズナの転写因子DREB2Aはシス配列であるDREを介して乾燥および高温ストレスに応答した遺伝子の転写活性化に関与しており、これらのストレスシグナルのクロストークにとって重要な位置を占めている可能性がある。DREB2Aの下流遺伝子にはストレス特異的な発現パターンを示すものがあるので、これらの発現に注目して解析を行った。
シロイヌナズナの植物体を用いて乾燥と高温ストレス処理を同時に行うと、高温応答性の下流遺伝子はより強く発現し、葉の温度もより高くなっていた。したがって、高温に乾燥が伴うと植物はより強い高温ストレスを受け、応答も強くなると考えられた。次に乾燥または高温ストレスに特異的な発現パターンを決める因子を明らかにするために、乾燥および高温ストレス応答性のDREB2AからDREを含むプロモーター断片を単離し、その制御下でGUSを発現するシロイヌナズナを作出した。これらの植物体にストレス処理を行ったところ、GUSは内生の遺伝子と同じ発現パターンを示した。この結果からDREB2Aのストレス特異的発現パターンはプロモーターの塩基配列によって制御されると考えられた。