抄録
葉緑体は独自の原核生物型リボソームを持つが、この葉緑体リボソームには、7種類の葉緑体特異的に存在するリボソームタンパク質plastid-specific ribosomal protein (PSRP)を含むことが明らかになっている。いずれのPSRPタンパク質も機能が不明であるが、多くの陸上植物において高度に保存されており、葉緑体の機能に大きく関与するものと考えられる。7種のPSRPのうち、PSRP-1とPSRP-3は多くのシアノバクテリアにも存在しており、PSRP-1は大腸菌において定常期に翻訳を抑制するタンパク質hibernation promoting factor (HPF) と類似していることが報告されている。
我々はSynechocystis sp. PCC 6803株のpsrp-1破壊株及び過剰発現株を作成し、野生株との生育比較を行った。その結果、固体培地において30℃では生育にほとんど差が現れなかったが、40℃高温ストレス条件下では破壊株は急速に死滅した。しかし、培地にグルコースを添加して30℃で培養すると破壊株の生育が野生株よりも促進され、過剰発現株の生育は抑制された。このことから、PSRP-1が翻訳制御を通して細胞の活性を抑える働きをしていることが期待された。