日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葯タペータムと雄性配偶体形成を制御するステロールの役割
*鈴木 優志大山 清上出 由紀子棚橋 沙由理斉藤 和季村中 俊哉永田 典子
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p. 0798

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抄録
植物の生殖器官には脂質が多く含まれているが、個々の機能には未解明な点も多い。我々はステロールが生殖器官の発生に果たす機能を、シロイヌナズナを用いた逆遺伝学的なアプローチで解析した。
ステロール生合成の鍵酵素であるHMG-CoA還元酵素はシロイヌナズナではHMG1HMG2によってコードされている。hmg1は矮性、早期老化、雄性不稔の形質を示し、hmg1 hmg2二重変異体は雄性配偶体致死となって単離できなかった。電子顕微鏡観察の結果hmg1では葯タペータムの脂質系オルガネラが縮小し、成熟花粉はポーレンコートレスに、hmg1 hmg2の花粉小胞子はつぶれていた。
次にステロール骨格形成段階に注目した。ステロール骨格はオキシドスクアレンがシクロアルテノールまたはラノステロールへと環化されることで形成される。前者をシクロアルテノール合成酵素(CAS1)が、後者をラノステロール合成酵素(LAS1)が触媒する。CAS1のノックアウトアリルであるcas1-2は雄性配偶体致死となって単離出来なかった。しかしcas1-2の花粉小胞子はhmg1 hmg2二重変異小胞子に比べて異常は小さかった。従って花粉小胞子の発達にはメバロン酸からオキシドスクアレンまでの中間代謝物または派生産物が重要であるか、ラノステロールを経由するステロール合成経路が重要であるかの可能性が考えられる。
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© 2009 日本植物生理学会
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