抄録
低温とアクアポリンとの関係はこれまでいくつか報告されているが、アクアポリンが低温に対してどのように機能するか未だ明らかになっていない。我々はリアルタイムPCRを用い、イネの耐冷性品種と低温感受性品種のアクアポリンの発現を比較したプロファイルから、イネの耐冷性に関係が深い遺伝子を7種類特定した。さらに、耐冷性イネを薬剤処理によって耐冷性を失わせる実験から、PIP1群の遺伝子が特に耐冷性と関係が深いと推測した。中でも、OsPIP1;3の発現変化が耐冷性と最も関係が深い。我々が推測した通り、OsPIP1;3遺伝子を過剰発現したイネOE1は耐冷性形質を示した。OE1では、低温においてもOsPIP1;3の遺伝子発現量が減少しない。この性質は耐冷性品種が持つ性質と同じである。一方、OsPIP1;3の水透過性を計測したところ、OsPIP2群遺伝子の水透過性に比べて、はるかに低い値を示した。しかし、OsPIP1;3はOsPIP2;2やOsPIP2;4と共発現させると、OsPIP2;2やOsPIP2;4の水透過性を向上させることが解った。OE1のイネでは、OsPIP1;3の過剰発現で増加したタンパク質がOsPIP2群のタンパク質と相互作用し、水透過性を向上させることによって、低温下での水分バランスを改善し、イネを耐冷性にすると推測される。