抄録
イネ3量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子欠失変異体d1のアリル、10種類の転写産物と翻訳産物を解析した。各変異体からRNAを抽出後、全長約1.2 kbの転写産物を増幅するプライマーを用いてRT-PCRを行った結果、全ての変異体で転写産物が確認できた。この中で、3種類はin-frame 変異体であった。具体的には、d1-3が効果器結合領域(2)内に48塩基欠失、d1-4がGTA結合領域(A)内に1塩基置換、d1-8が効果器結合領域(3)内に3塩基欠失が生じていた。正常なαサブユニット(Gα)は380アミノ酸からなり、SDS-PAGEでは約46 kDaを示す。上記3種類のin-frame 変異体は、およそ、40 kDa, 46 kDa, 45 kDaの変異タンパク質の蓄積が期待された。そこで、各変異体から水性2層分配法で細胞膜画分を調製後、抗Gα抗体でWestern blot 解析を行ったところ、d1-3とd1-8ではGαが全く検出できず、d1-4ではわずかな量のGαが検出された。残り7種類のアリルは、遺伝子内の各所に欠失、挿入などが生じていたが、期待されるサイズのGαは全く細胞膜に蓄積していなかった。以上の結果より、イネ3量体Gタンパク質が細胞膜上に蓄積するためには、安定な高次構造を必要とすることが示唆された。