日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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生育光環境が植物の両面気孔の光応答性に及ぼす影響
*王 いん野口 航寺島 一郎
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p. 0872

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抄録
多くの草本植物の葉は、気孔を両面にもつ。背腹葉では、光はおもに葉の向軸側(表側)に当たる。光の大部分(特にクロロフィルに吸収されやすい青色光や赤色光)は葉肉組織で吸収されるため、背軸側(裏側)の表皮に到達する光は弱く、光質も向軸側と異なる。私たちは、自作の両面ガス交換システムを用いて、ヒマワリの葉の背軸側の気孔は、向軸側の気孔より光に敏感に応答して開孔することを明らかにした。また、背軸側気孔は、葉の透過光や緑色単色光によって顕著に開孔することを発見した(Wang et al., 2008, PCE, 31:1307-16)。これらは、気孔の光応答性が生育中の光環境に馴化した結果と考えられる。そこで、ヒマワリの展開中の葉を裏返しにして栽培し、気孔の光応答に栽培光環境への馴化が見られるのかを調べている。裏返しにした葉の気孔indexは両面とも対照葉と差がなかったが、向軸側の気孔密度はやや減少した。背軸側の気孔密度は変わらなかった。また、向軸側に光を受けた対照葉の柵状組織は厚く、細胞は細長かった。一方、裏返しにした葉の柵状組織は薄く、細胞は短く、海綿状組織は厚く、細胞サイズは大きくなった。裏返しにした葉の背軸側の気孔の白色光および青色光への感受性は高くなり、赤色光への感受性は変化しなかった。向軸側の気孔の感受性はいずれの光に対しても低くなった。緑色光への応答性は計測中である。
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© 2009 日本植物生理学会
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