抄録
現在、作物の生育しにくい酸性土壌は世界の農耕地面積の30~40%を占める。この土壌では、Alがイオンとして溶出し根の伸長を著しく阻害する。他にも、世界には重金属で汚染された土壌が存在する。本研究ではAl、重金属及び酸化ストレスに耐性を示す野生有用植物メリケンカルカヤからのこれらのストレス耐性遺伝子群の単離と解析を目的として以下の2つの実験を行った。
A)メリケンカルカヤをAl処理した後、RNAを抽出し、フィンガープリント法によってAlストレス誘導性遺伝子の候補群9個を得た。これらの塩基配列を決定し、cDNAの配列に高い相同性を示すトウモロコシやイネの完全長cDNAを得た。これらの遺伝子群から耐性遺伝子を選抜するために、遺伝子を導入した酵母形質転換株を構築し、これらの株のAl、重金属(Zn、Cd、Ag、Cu)、酸化(H2O2、Diamide)ストレス感受性試験を行った。その結果、酸化ストレスに耐性を示す株が4株得られた。B)抽出したRNAからcDNAを逆転写して、ライブラリーを構築し、酵母をスクリーニング系に用いて耐性遺伝子の直接単離を試みた。結果、上記の各ストレスに耐性を示す株が6株単離された。これらについても、相同性の高いトウモロコシやイネの完全長cDNAを得て、感受性の再確認を行っている。
さらに、A、Bで得た各耐性遺伝子の耐性機構を検討中である。