日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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細胞膜表面のイオン活動度推定プログラムを用いたシロイヌナズナのアルミニウムストレスの解析
*小林 安文我妻 忠雄小山 博之
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p. 0930

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抄録
根部細胞膜表面は、養分吸収サイトであり障害金属のターゲット部位である。従って、根のイオンストレスに関して細胞膜表面に到達するイオンの量が、根の伸長阻害と密接に関連していると考えられる。そこで、酸性土壌で過剰に溶解するアルミニウムイオン(Al3+)について細胞膜表面での活動度とストレスとの関係を解析した。
細胞膜表面のAl3+活動度は、溶液中の共存イオン濃度やpHに影響を受ける。また、pH 4.5以上で解離する細胞膜表面の弱酸性リガンドによる細胞膜の負電荷密度も関与する。これらを考慮したイオン種推定及びGouy-Chapman Sternモデルに基づいたプログラムによると、2 μM AlCl3を添加したイオン強度の低い溶液系での溶液中及び細胞膜表面のAl3+活動度は、pH 4.7ではそれぞれ、1.0 μM、12.3 μMであった。一方、pH 5.5ではそれぞれ、0.1 μM、11.5 μMであった。このpH 5.5のAl添加条件では、野生株の根の伸長は阻害されなかったが、リンゴ酸放出を欠損したAl超感受性変異体では著しい根伸長阻害が認められた。さらに、同様の条件で処理した野生株においてAl耐性遺伝子であるリンゴ酸トランスポーター遺伝子(AtALMT1)の発現誘導が確認できた。これらのことより、Al毒性の評価において細胞膜表面のAl3+活動度が重要な指標になると考えられる。
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© 2009 日本植物生理学会
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