日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

トマトの懸濁細胞と植物体における亜鉛集積性と亜鉛結合物質の生成
*丹生谷 孝彦佐久間 洋井上 雅裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0940

詳細
抄録
植物は根から吸収した亜鉛(Zn)を必須微量元素として利用している。しかし、過剰濃度のZnは一般的に動物より植物や水生生物に対して強い毒性を示す。本研究では植物のZn耐性獲得機構を解明するため、トマトの懸濁培養細胞と植物体を用いて生体内におけるZnの集積性と結合物質生成を調べた。品種は桃太郎とマイクロトムを用いた。まず、懸濁細胞を用いて低濃度~過剰濃度(0.1-1mM)のZn条件で細胞の成長とZn吸収、結合物質の生成について調べた。Zn量は原子吸光計、Zn結合物質はゲル濾過とHPLCで分析した。その結果、低濃度Zn条件に比べ、1mM Zn条件では20%~30%の成長阻害がみられ、その阻害は30日間の長期継代培養後も殆ど改善されなかった。低濃度条件でZnは細胞の不溶性画分に多く存在したが、高濃度条件では可溶性画分のZn量が大幅に増加した。また、低濃度Zn条件では金属結合ペプチドであるフィトケラチン(PC)は検出されなかったが、高濃度Zn条件でPC合成とGSH量の増加が確認された。これらから、高濃度条件での細胞内Zn集積にPCが関与することが分かった。次に、発芽後20日目の植物体を用いて類似の実験を行った。その結果、1mM Zn濃度条件でも根や地上部の成長阻害は起らず、顕著なZn集積やPC合成も起らなかった。現在、処理や培養条件を変えてその原因について調べている。
著者関連情報
© 2009 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top