抄録
植物が成育に必要とする元素には多量必須元素(窒素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、マグネシウム)と微量必須元素(鉄、マンガン、亜鉛、銅、ニッケル、ホウ素、塩素、モリブデン)がある。このうち本研究において対象としている亜鉛は微量必須元素であるため、多量元素とは異なり細胞内で必要とされる濃度範囲が低くかつ狭い。例えば、亜鉛が過剰量存在する環境下でシロイヌナズナを生育させると、葉が淡緑色となり、根が短くなるなどの影響が見られる。本研究では、植物が過剰量の亜鉛に曝されたときに、植物細胞が果たす亜鉛恒常性維持機構の解明を目的としている。特に亜鉛が細胞内へと輸送される入口となる細胞膜に着目しており、根由来の培養細胞Deep株から水性二層分配法を用いて細胞膜画分を調製し、亜鉛変動タンパク質の探索に用いた。Deep株に亜鉛未処理、亜鉛処理(ZnSO4 300μM)した後、3時間後の細胞から細胞膜画分をそれぞれ調製し、質量分析計LTQ-Orbitrap XLを用いてショットガン解析した。変動解析にはデータ処理ソフトScaffoldを用い、亜鉛処理で増減したタンパク質を解析した。本学会では、量的変動がみられたいくつかのタンパク質について議論する。