日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ケミカルバイオロジーによるシロイヌナズナ過敏感細胞死制御機構の解明
*能年 義輝白須 賢
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p. 0952

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抄録
我々はシロイヌナズナとトマト斑葉細菌病菌DC3000 Rpm1株の植物-病原体モデル感染系を用い、ケミカルバイオロジー手法による抵抗性遺伝子依存性の病害応答機構解明を目指している。シロイヌナズナ培養細胞を利用し、防御応答の指標であるHR細胞死を高速で定量的に検出する感染評価系を確立し、ChemBridge社化合物ライブラリー10,000個のスクリーニングからHR細胞死を亢進する化合物を7種類単離した。これら薬剤をシロイヌナズナに処理すると、全ての場合にPR1遺伝子の発現を誘導した。サリチル酸(SA)合成酵素をコードするSID2遺伝子欠損株を用いた同様の実験から、2種類の化合物のPR1発現誘導能はSID2非依存的であることがわかった。化合物処理によりSID2依存性の3種の化合物はSA量を増大させた。SA合成能依存性薬剤の作用機作としてSA不活性化経路の阻害を想定し、SA配糖化酵素(SAGT)への影響を調べた。その結果、SA合成能依存的な3種類の薬剤がSAGT活性を阻害することを見出した。これら薬剤のSAGT阻害とHR亢進作用の有効濃度は一致した。
これら薬剤はシロイヌナズナ水耕栽培培地に添加することにより病害抵抗性を向上させた。つまり、本スクリーニングから得られた植物防御応答亢進剤とその作用メカニズムは環境負荷の少ない病害抵抗性誘導剤と植物防御技術の開発に応用できる。
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© 2009 日本植物生理学会
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