抄録
モデル植物であるシロイヌナズナでは現在までに13種のディフェンシン遺伝子が見出されている。その中でも plant defensin 1.2(PDF1.2)遺伝子は、ジャスモン酸、エチレンによって調節される病害応答系のマーカー遺伝子として広く用いられてきた。PDF1.1 遺伝子はPDF1.2 遺伝子と高い相同性を有する遺伝子で、病原菌接種によってその発現が上昇することから病害抵抗性に関与することが示唆されているが、その発現制御に関しては依然として不明な点が多い。そこでPDF1.1 遺伝子のプロモーター領域とルシフェラーゼレポーター(Fluc)の融合遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナとタバコを用いて、各種処理(病原菌、化合物、エリシター等)に対するプロモーター活性の変動を詳細に観察した。その結果、各処理に対するPDF1.1 遺伝子プロモーターの挙動はmRNAの蓄積パターンとよく一致し、PDF1.2 遺伝子のそれとは異なる病害応答性と組織特異性を示すことが明らかとなった。また、タバコに導入した場合においてもシロイヌナズナPDF1.1遺伝子プロモーターは同様な発現特異性を有することから、その制御機構の保存性は高いことが示唆された。