抄録
グラム陰性菌の細胞表層の構成成分であるリポ多糖(lipopolysacchride, LPS)は、植物の防御応答を誘導する。また、病原応答だけでなく、LPSがマメ科植物と根粒菌の共生成立にも関与することが報告されており、植物と微生物の相互作用を理解する上で、植物のLPS認識機構の解明は重要である。しかし、植物のLPS認識機構は、ほとんど明らかになっていない。一方、動物ではLPSの認識機構の解明が進んでおり、LPS受容体やLPS結合タンパク質(LBP)が発見されている。LBPは、LPSのlipidA部分に結合して複合体を形成する。さらに、この複合体がLPS受容体に認識されることで、動物の免疫機構が活性化される。本研究では、動物のLPS認識機構に着目し、LPSを介した植物-微生物間の相互作用の解明に向けて、マメ科のモデル植物であるミヤコグサのLPS結合タンパク質遺伝子のクローニングを試みた。human LBPの配列情報を基にミヤコグサのゲノムライブラリーをBLAST解析した結果、相同性の高い領域を4カ所特定した。RT-PCRにて3種の遺伝子をクローニングし、LjLBP1, 2, 3とした。いずれのLjLBPとも、human LBPとのアミノ酸配列の相同性が約40%で、LjLBPの内、LjLBP1のN末端ドメインを大腸菌で発現させたところ、LBPと結合した状態でLPSが分離・精製された。