抄録
マメ科植物は根粒を形成し、土壌細菌である根粒菌と共生して窒素固定を行う。これはマメ科植物と根粒菌間の複雑な相互作用の上に成り立っており、その分子機構を解明することは、共生窒素固定の有効利用を行う上で重要である。根粒は形成されるが窒素固定活性に異常があるFix-変異体の存在は、初期シグナル伝達の後に引き続く根粒菌の感染プロセスと細胞内共生の成立、窒素固定活性の発現過程に植物側の因子が必須であることを示している。その複雑性から、これらの過程に関与する植物側の因子は多岐にわたると考えられるが、これまでに報告されたFix-変異体の数は限定的である。これまでミヤコグサでは、主に用いられた突然変異誘発剤ethyl methanesulfonate (EMS)や植物組織培養による体細胞変異が用いられていたが、効率よく新規の変異体を得るためには異なる原理の手法を用いることが有効であると考えられる。そこで、今回我々は、重イオンビーム照射植物からFix-変異体の選抜を行ったので報告する。C6+イオンビームが照射されたL. japonicus MG20の種子およそ5000粒からM1約2400系統のM2種子を採取し、約72000粒についてスクリーニングを行ったところ、26系統のFix-候補を得た。Gifuと交配してマッピングを行ったところ、これまでに5系統が新規変異体であると予測された。