抄録
我々はこれまで、Bardyrhizobium属細菌のnifH遺伝子と相同性の高い遺伝子が、サツマイモ体内で発現していることを報告してきた。また、サツマイモ体内より、Bardyrhizobium属を含むいくつかの窒素固定エンドファイトを分離した。そこで本報告では、Bardyrhizobium属細菌のエンドファイト窒素固定菌としての機能を評価した。
サツマイモより分離したAT1株は、nifH遺伝子および16S rRNA遺伝子ともにBardyrhizobium属細菌と高い相同性を示す。しかしながら、AT1株はBardyrhizobium属根粒菌の宿主とされる、ダイズ、アズキ、ササゲ、ラッカセイ、ルピナス、クサネムのいずれにも根粒の形成を示さなかった。一方、接種したダイズの茎からは、接種菌の遺伝子が検出された。また、AT1株をイネ、トウモロコシ、ヒマワリの根に接種したところ、それらの茎からも菌の遺伝子が検出された。このことから、サツマイモより分離したBardyrhizobium属細菌は、広範な植物に感染し、根より地上部に移行できるものと考えられた。また、サツマイモ中で発現するnifH遺伝子と高い相同性を示すBardyrhizobium属細菌(MAFF210318株)をサツマイモに接種したところ、葉の葉緑素含量が有意に増加したことから、植物体内における窒素固定の可能性が示唆された。