抄録
アーバスキュラー(AM)菌根菌は真菌類であり、現生する陸上植物種の80%以上と共生する普遍的な微生物である。AM菌根菌は根の皮層細胞内に侵入して樹枝状体と呼ばれる栄養交換器官を形成し、宿主植物にリン酸を供給するほか、乾燥耐性や耐病性の向上といった農業上有用な形質を付与することが報告されている。近年、AM菌根菌がリン酸だけでなくアンモニウムや硫酸の供給も行う事が示されており、樹枝状体を取り囲む植物細胞膜においてはリン酸を中心とした様々な養分が活発に輸送されていると考えられる。しかしそこで働くと予想される菌根誘導型トランスポーターは、現在のところリン酸トランスポーターしか同定されていない。
私達は、重要な作物であるダイズにおいて菌根からのリン酸およびアンモニウム輸送に関わるトランスポーターに着目し、発現解析や性状解析に着手した。データベースを検索したところ、ダイズのゲノム上に13分子種のリン酸トランスポーター(PT)遺伝子、10分子種のアンモニウムトランスポーター(AMT)遺伝子を見出した。Glomus intraradicesを接種して8週間後のダイズのAM菌根からRNAを抽出し、ゲノム情報をもとに設計した各遺伝子を特異的に増幅できるプライマーを用いたRT-PCRを行って、ダイズPT遺伝子、AMT遺伝子の発現解析を試みた。各分子種の系統的な関係、発現パターンを報告する予定である。