抄録
ストリゴラクトン (strigolactone, SL) は共生菌であるアーバスキュラー菌根菌 (arbuscular mycorrhizal fungi, AM菌)と強害雑草である根寄生雑草との相互作用における宿主シグナルとして機能するだけではなく,地上部の枝分かれを制御する内生ホルモンとしても働く。SLを感受するとAM菌と根寄生雑草はそれぞれの宿主認識反応である菌糸分岐と種子発芽を起こす。これまでに我々は様々な天然SLやSL合成誘導体についてAM菌に対する菌糸分岐誘導活性を評価してきた。その結果,メチルブテノライド環の2'位の立体化学が活性強度に強く影響すること,環修飾様式によって誘導される菌糸分岐の形態が異なり,活性を示す濃度範囲も大きく異なること,エノールエーテル結合が開裂すると活性を失うことなど,根寄生雑草について報告されてきたこととほぼ共通する知見を得てきた。しかし,根寄生雑草に対して活性を示さないエノールエーテルの炭素‐炭素二重結合を一重結合に改変した飽和型GR24がAM菌に対して活性を示すことが判明した。さらに,飽和型GR24が根寄生雑草の種子発芽と幼根伸長を強く阻害することが分った。このことはAM菌と根寄生雑草とではSL受容機構が異なることを示唆しており,AM共生を阻害することなく根寄生雑草防除を達成できる化学的防除法の開発が可能であることを示唆している。