抄録
ゴマノハグサ科(Orobanchacea)に属するストライガ(Striga)とオロバンキ(Orobanche)は代表的な根寄生植物であり、世界の農業生産に甚大な被害を与えている。これらの根寄生植物は絶対寄生であり、宿主に寄生することによってのみ生存できる。根寄生植物の種子は極めて微小で貯蔵養分も限られているため、発芽後数日間で宿主の根に寄生できない場合には死滅する。そこで根寄生植物は、宿主の根の存在を検出し、根の近傍の種子だけが発芽するという巧妙な生存戦略を備えている。この宿主認識には、植物の根から分泌されるストリゴラクトンが関与している。最初に単離されたストリゴラクトンであるstrigolを始めとして10種類以上のストリゴラクトンが報告されている。ストリゴラクトンは化学的に不安定で、土壌中では速やかに消失するため、根の近傍の種子だけが発芽する。植物は単独ではなく複数のストリゴラクトンの混合物を分泌しており、ストリゴラクトンの種類、その組み合わせは同種の植物でも品種によって異なっている。また、生育ステージや生育条件によって分泌されるストリゴラクトンの質的/量的変化が起きる。これらの違いが発芽刺激活性の変化を介して根寄生植物の宿主認識に関与しているのであろう。また、発芽以降の過程における宿主と根寄生植物の相互作用も宿主認識に寄与していると考えられている。