日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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花粉の発育と発芽におけるポリアミンの役割
*橘 昌司宋 建軍
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p. S0042

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抄録
ポリアミンは,花芽分化,花器形成,受精,果実発育,種子形成など,植物の生殖生長の様々な過程に関係している.花粉の発育についてみると,発育中の未熟花粉はスペルミジンとプトレシンに富み,これらの多くはヒドロキシ桂皮酸アミド(HCAA)として存在する.未熟花粉はポリアミン合成能を有し,それが損傷を受けると成熟花粉の稔性が低下するが,花器または花粉培養培地にポリアミンを与えると稔性低下が軽減される.ポリアミンは雄性不稔にも関係しており,トウモロコシの雄性不稔系統は稔性系統に比べて成熟花粉のポリアミン含量(特に酸不溶性HCAA)が著しく少ないが,稔性回復遺伝子導入系統の花粉のポリアミン含量は通常の稔性系統と差異がない.一方,花粉発芽に関しては,トマト花粉では,発芽に先立ってポリアミン合成酵素の活性増大とポリアミン含量の高まりが起こり,酵素活性の増大が阻害されると発芽が抑制される.この酵素活性増大はmRNA翻訳活性の高まりを伴っており,高温による発芽抑制や貯蔵中の花粉発芽力の減退にはこの活性の損傷が密接に関係している.以上のように,ポリアミンは雄性器官である花粉の正常な発育や発芽に重要な役割を果たしている.
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© 2009 日本植物生理学会
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