日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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小分子RNAからみえてくる植物ゲノムとゲノム寄生因子の攻防
*佐藤 豊野坂 実鈴
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p. S0080

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抄録
トランスポゾンの転移は挿入変異や染色体異常など、宿主ゲノムを不安定にする原因となる。このため、多くのトランスポゾンは宿主により不活性な状態が維持されている。すなわち、宿主ゲノムの安定化にはトランスポゾンを不活性化する宿主側の機構が必要である。21nt前後の小分子RNA がそのトリガーとして働くことが知られているRNAサイレンシングはウィルスやトランスポゾンなどのゲノム寄生因子に対する宿主側の防御機構として働くことが知られている。一方、トランスポゾンは多くの生物においてゲノムの主要な構成因子である。このことはトランスポゾンが宿主のサイレンシングを抑制あるいは回避する機構が存在することを意味している。
本発表では、イネのトランスポゾンが宿主のRNAサイレンシング経路を利用して自身の不活性化を回避する経路を紹介する。このような経路は、RNAウィルスが宿主へ感染する際のRNAサイレンシング経路を介した宿主と寄生者の攻防とよく似ている。一方、トランスポゾンの場合、その利己的な振る舞いにより自己のコピーを宿主ゲノム上に増殖させると同時に宿主ゲノムの進化にも寄与している可能性があり、単純な宿主と寄生者の攻防という図式が相応しいのか検討の余地がある。本発表では、小分子RNAから見えてくる宿主ゲノムと寄生者の攻防、ならびに小分子RNAがゲノムの進化に果たす役割について考察したい。
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© 2009 日本植物生理学会
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