日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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生物の基本原理を原子生物学的に解く為にシゾンはある
*田中 寛黒岩 常祥
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p. S0086

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抄録
Cyanidioschyzon merolae(シゾン)はイタリア、ナポリの硫酸性温泉より単離された単細胞性の紅藻であり、核、葉緑体、ミトコンドリア、ミクロボディなどのオルガネラを細胞あたり一個のみ含む、真核細胞としての最小構成を持つ生物である。我々はこの細胞をモデル系とすることで、真核細胞一般、あるいは特に植物細胞に固有の生命現象の原理的解明を目指して研究を進めている。真核細胞はシゾンのような原始細胞として誕生し、ここで生まれた原理を基盤に大発展を遂げてきた。従って、シゾン研究で得られる構造生物学的知見から発展した原子生物学的知見は、全ての真核に通用する基本原理の解明に直結するものである。手始めとして我々は、通常の真核ゲノムにみられる高度繰り返し配列が全く存在しない100%ゲノム配列を、真核細胞として初めて2007年までに決定した。そしてその結果、通常の真核細胞遺伝子にみられるイントロンが極めて稀であることも判り、MS等によるプロテオーム解析にも最適であることが明らかとなった。さらに、外来DNAの導入や染色体との組換えによる分子遺伝学的手法も利用可能となったことから、今後の研究進展に必須なツールの不足はない。本講演ではシゾンにおける研究インフラの進展を紹介すると共に、シゾンを用いたオルガネラ分裂装置の解明について、またオルガネラゲノムと核ゲノムの複製共役機構について紹介する。
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© 2009 日本植物生理学会
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