抄録
シアノバクテリアは光合成生物のモデルとして、光合成系を中心とした代謝の制御に関する研究に使用されている。独立栄養生物であるシアノバクテリアは、光や栄養などの外部環境の変化に対応して代謝状態を柔軟に調節していると考えられるが、栄養欠乏条件などに対する代謝物量やその変化を直接調べた例はほとんど報告されていない。本研究では栄養欠乏条件に対する代謝応答を解析する目的で、炭素・窒素・硫黄代謝の中枢を担っているアミノ酸類の細胞内プールの定量法を確立した。分析に用いるシアノバクテリアは、対数増殖期にある培養液を遠心またはろ過により集菌し、液体窒素中で凍結させた後、抽出する時まで-80℃で保存した。凍結した菌体からメタノールにより抽出を行った後、その残渣をメタノールと水の混合溶媒中でジルコンビーズを用いて破砕して上清を回収し、合わせて抽出液とした。抽出液は遠心エバポレーターを用いて乾燥させておき、分析時に水に溶かして使用した。水に溶かした抽出物は固相抽出の後に誘導体化し、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)に導入して分析・定量を行った。さらに、この系を用いて測定した窒素欠乏や硫黄欠乏、光条件変化に対する網羅的なアミノ酸プールの変化について報告する予定である。