抄録
塩ストレスは作物の成長・収量を減少させる代表的な非生物的ストレスの一種である。塩ストレスにさらされたオオムギの根の水輸送特性及び制御機構を解明するため、我々はプレッシャーチャンバー法を用いた研究を進めており、これまでに塩ストレスによって引き起こされる水輸送活性の変化は浸透圧刺激を受容することによるものであることを明らかにした。また、耐塩性品種ではストレス開始後1時間で水輸送活性は急速に低下し、4時間で一過的な回復が起こるが、脱リン酸化阻害剤であるokadaic acid (OA) 処理によってストレス開始後1時間で起こる水輸送活性の急激な低下は抑制されたものの、未処理と比較した場合にその抑制程度は不十分なものであった。一方、エンドサイトーシス阻害剤のwartmannin(WM)処理では十分に抑制された。さらに、エキソサイトーシス阻害剤のbrefeldin A (BFA) 処理によってストレス開始4時間で起こる水輸送活性の一過的回復が抑制された。これらのことは、膜タンパク質のリン酸化、およびエンドサイトーシスを伴ったリサイクリングが関与している可能性を示唆するものである。現在免疫学的手法による解析も進めており、これらについても報告する。
この研究は生研センター基礎研究推進事業の支援を受けて行った。