抄録
液胞は巨大なオルガネラであり、不要タンパク質の分解、色素やタンパク質の蓄積や細胞の形態形成、恒常性維持など多様な機能をもつ。植物においてショ糖は主要な輸送物質であり、液胞内には高濃度のショ糖が蓄積されている。ショ糖は浸透圧調節や代謝に重要であるが、その輸送を担うトランスポーターの機能については不明な点が多い。
本研究ではまずタバコの液胞膜型ショ糖トランスポーター(NtSUT4)を同定し、NtSUT4-GFPを恒常発現するタバコ培養細胞(BY-SUTG)を作出した。次に細胞生長に関するNtSUT4の機能を解析するため、液胞を除去したミニプロトプラストの培養系を用いて細胞形態の変化について評価を行った。その結果、培養2日目の細胞断面積についてはコントロールとBY-SUTGの両者の間に差異がみられなかった。一方、BY-SUTGの細胞伸長率(細胞長軸/細胞短軸)はコントロールと比較して減少していたことから、BY-SUTGでは細胞の長軸方向への伸長が抑制されることが示唆された。そこで同様にミニプロトプラストにおいてカルコフローによりセルロースを染色し、その蛍光輝度を定量的に測定した。その結果、BY-SUTGの方が蛍光輝度が高く、セルロースの蓄積量が増加していることがわかった。以上の結果からNtSUT4がショ糖の輸送を介して細胞壁の形成に影響を与え、細胞形態に関与する可能性について議論する。