p. 0042
イネ科植物はキレート化合物であるムギネ酸類を分泌し、その鉄錯体をトランスポーターにより取りこむ機構を有している。今回、我々はペチュニアにオオムギのムギネ酸類3価鉄錯体トランスポーター遺伝子HvYS1を導入し、培地にムギネ酸類鉄錯体を添加することによりペチュニアが鉄を獲得し、アルカリ耐性植物になるかを検証した。HvYS1遺伝子をアグロバクテリウム法によりペチュニアに導入し、RT-PCRによりHvYS1の発現を確認した系統を用いて、デオキシムギネ酸鉄錯体(DMA-Fe(III))含有のpH 5.8またはpH 8.0の水耕培地においてアッセイを行った。栽培2週間後の根の抽出物から、負イオンESI-FTICRMS (ElectroSpray Ionization Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass Spectrometry)法で検出を行った。HvYS1を発現させたペチュニアの根においてのみ、DMA-Fe(III)の分子イオンピークが得られた。またアルカリ培地で水耕栽培を行い、遺伝子組換え体がコントロールに比べて全重量が2倍に、根の鉄濃度も1.5倍に上昇した。この結果により、イネ科固有の鉄獲得機構を利用して、イネ科以外の植物に対してアルカリ耐性を付与できることが示された。