抄録
CDP-コリン合成酵素 (CCT, EC 2.7.7.15)は、ホスファチジルコリン(PC)の生合成経路であるCDP-コリン経路の鍵酵素である。シロイヌナズナのCCTをコードする二つのイソ遺伝子CCT1とCCT2に欠損をもつT-DNA挿入二重欠失ラインcct1-1 cct2では、花においてエピジェネティックホメオシスを示す。具体的には、雄蕊は心皮に、花弁はがくに置き換わり、形態異常は世代を重ねることでより顕著になる。変異は、花形態形成のABCモデルによると、Bクラス遺伝子の変異ときわめて類似していたのでAPETALA3 (AP3)とPISTILLATAの発現レベルに対する影響をRT-PCRにより調べた。その結果、AP3のみ転写産物レベルが抑制されていることがわかった。 AP3プロモータ領域のDNAのメチル化レベルをバイサルファイトシーケンス法により調べた結果、これまでに報告した領域(関口ら、植物生理学会年会2008)のほかに、高度にメチル化されている領域の存在が明らかになった。以上のことは、cct二重変異株で観察されるエピジェネティックホメオシスは、Bクラス遺伝子AP3のDNAメチル化が原因であると考えられる。