抄録
NIP遺伝子の一つであるNIP5;1は低ホウ素条件でのホウ素の効率的な輸送に必須なチャネルであり、その転写産物の蓄積はホウ素欠乏で高まる。NIP5;1のホウ素栄養応答の解明のため、NIP5;1プロモーター領域と5’非翻訳領域(5’UTR)のホウ素欠乏応答における役割について調べたところ、低ホウ素条件における根の発現に、NIP5;1プロモーター内の3つの異なる領域が関与し、一方5’UTRがNIP5;1転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることを前年回で報告した。
本年回では、NIP5;1の5’UTR内に存在するホウ素欠乏応答領域に関してさらに検討を加えた。NIP5;1の5’UTRの断片の下流にGUS遺伝子を連結させ、カリフラワーモザイクウィルス35SRNAプロモーター制御下で発現させた形質転換植物を作製し、ホウ素欠乏および十分条件におけるGUS活性を調べた。その結果、5’UTR、312 bpを挿入した形質転換植物では、高ホウ素条件に比べて低ホウ素条件でそのGUS活性が高くなった。しかしながら312bp内の+184-+197(13bp)を欠損させると、ホウ素の応答がみられなくなり、低・高ホウ素条件ともにそのGUS活性が高くなった。以上のことから、5’UTRの少なくとも+184-+197の配列がNIP5;1転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることが示唆された。