抄録
我々はマメ科植物を用いた酸性土壌の修復技術を開発するために、ダイズcDNAライブラリーの大腸菌機能発現スクリーニングによって23個の耐酸性遺伝子を単離し、PROTON TOLERANCE(PTO)と命名した。それらの遺伝子の機能解析を進めるために、ダイズ遺伝子の推定アミノ酸配列を問い合わせ配列としてBRASTP検索を行い、シロイヌナズナのオルソログ遺伝子を同定した。PTO49のシロイヌナズナオルソログには、共通モチーフを持つタンパク質をコードする3つのパラログ遺伝子が存在するため、それらをAtPTO49a、AtPTO49b、AtPTO49cと命名した。AtPTO49aとAtPTO49bは推定アミノ酸配列の同一性が83%と高く、またダイズのPTO49と近縁であることが系統樹解析から分かった。RT-PCRによって器官別の各遺伝子の転写物の蓄積を確認したところ、3遺伝子ともほぼ全ての器官で発現していた。またT-DNA挿入破壊株の表現型を解析した結果、AtPTO49b破壊株は、酸性ストレスに対する耐性が大きく低下し、さらに葉の形態形成異常を示した。一方、AtPTO49a破壊株の耐酸性は野生型と比べてわずかに低下した。こうしたことから、これらのパラログは異なる機能を分担していることが示唆された。