日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シンクロトロン放射光蛍光X線分析法によるヤナギの重金属蓄積機構の解明
*原田 英美子保倉 明子高田 沙織馬場 啓一寺田 靖子中井 泉矢崎 一史
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p. 0073

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抄録
本研究では重金属蓄積性樹木のヤナギを研究材料に用い、その金属蓄積機構を解明し、土壌の浄化技術を開発する。重金属蓄積性が報告されているイヌコリヤナギ(Salix integra)を比較対照に、初期成長の早いカワヤナギ(S. gilgiana)、ジャヤナギ(S.eriocarpa)の重金属耐性を調べた。その結果、カワヤナギはイヌコリヤナギよりもCd耐性が強く、葉でのCd濃度も高いことが判明した。Cd処理した植物体を部位別にサンプリングし、Cdの蓄積部位を調べた。ICP-AES分析の結果、木化した枝の樹皮において、最もCd濃度が高かった。重金属の蓄積部位とその化学形態をさらに詳しく調べるため、シンクロトロン放射光を用いた分析を行った。葉のμ-XRF(マイクロ蛍光X線)イメージングを測定し解析したところ、鋸歯先端にCdが高濃度に蓄積していることが判明した。木化した枝での重金属分布を同様にμ-XRFイメージングで調べたところ、樹皮のコルク皮層もしくはコルク形成層にCdの蓄積が確認された。また、μ-XANES(X線吸収端近傍構造)を測定して、この細胞でのCdの化学形態について検討したところ、Cdの解毒に働くとされる硫黄化合物との結合で観察されるCd-Sのスペクトルとは一致せず、Cd-Oもしくはイオン状態のCdと近いことが判明し、樹木に特異的な重金属解毒機構の存在が示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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